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講師の勝又より・・・興味深い医学英語の語源のお話

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講師の勝又より・・・興味深い医学英語の語源のお話

うんちく・小ネタ

メビオ講師コラム

2016/11/30(水)

こんにちは。英語科講師の勝又泰洋です。
私は、古代ギリシア・ローマ世界の研究をしています。
今回は、この私の専門分野について、メビオの指導科目である医学英語と結びつけながら、少しだけお話ししたいと思います。

今から2000年以上前の、しかも日本から遠く離れたヨーロッパ世界の話を、なぜこのコラムで取り上げるのか、と思う人も多いかもしれません。ですが、ご心配なく。実は、ギリシア・ローマ世界は、「言語」の点で、医学の世界と密接につながっているのです。
昔のギリシア世界では、「古典ギリシア語」が、ローマ世界では「ラテン語」が公用語として用いられていました。
そして実はこの二言語は、現代の医学英単語の成り立ちに大きくかかわっているのです。
前置きはこのくらいにして、いくつか例を見てみるのが良いでしょう。

1.autophagy(自食作用)
今年度ノーベル医学・生理学賞を受賞された大隅良典さんのお仕事で有名になった言葉ですね。
これは、古典ギリシア語の二つの要素から成っています。
autoは「自分自身」を、phagyは「食べる」を意味します。とても単純ですね。

2.acupuncture(鍼治療)
いわゆる代替医療のひとつに数えられるものですね。
これはラテン語由来の単語です。
acuは「針」を、punctは「刺す」を意味します(-ureは名詞接尾辞)。そのままなので暗記しやすいのではないでしょうか。

3.radiology(放射線医学)
古典ギリシア語とラテン語が合体したものもあり、これはその一例です。
radioはラテン語で「光線」を、logyは古典ギリシア語で「学問」を意味します。
どうでしょう、面白くなってきましたか。

4.Achilles’ tendon(アキレス腱)
最後は少し特殊なものを。
アキレスとは、ギリシア神話の英雄です。あるところに、「その水に触れた箇所は不死になる」という河がありました。
アキレスの母親は、息子を不死の存在にしようと、その河に幼い彼の全身を浸しました。
しかしこのとき彼女は、息子の踵を持って(頭から)水に入れたので、水に触れなかったその踵の部分だけがアキレスの弱点となってしまうのです。
アキレス腱は、比喩的に、「ネックとなっている部分」を意味しますが、その背景にはこのような神話物語があるわけです。
ちなみに、tendonの方も、「伸ばす」を意味するラテン語の動詞に由来しています。

さて、いかがだったでしょう。身体部位や病名など、医学にかかわる英単語のほとんどは、もとを辿ると古典ギリシア語とラテン語に行き着くと言われています。
ヨーロッパの古い世界を連想させることで、その単語に高尚な雰囲気が出る、といったところでしょうか。
医学単語を覚えるのが苦手、という人は多いかもしれませんが、語源がわかれば、その単語に親しみがわく、ということもあるかもしれません。
心を豊かにしながら勉強に励んでください。
Disce libens!(ディスケ・リベンスと読み、「楽しく学べ」を意味するラテン語の格言です)