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数学の新課程入試について

数学の新課程入試について

入試

メビオ講師コラム

講師

2014/08/22(金)

数学科の橋本です。

みなさんご存じの通り、 2015年度から数学では新課程入試が始まります。一方、センター試験や大半の大学では、旧課程を勉強してきた浪人生のために1年だけ経過措置が設けられています。

では、いったいどの分野を勉強すればいいのでしょうか?

そういったことで悩んでおられる医学部受験生のみなさんの参考にしていただくために、 平成27年度医学部入試数学出題範囲一覧というものを作ってみました。その名の通り、全国の医学部入試における数学の出題範囲や、旧課程履修者に対しての経過措置についてまとめてみたものです。

表をざっと眺めるだけでも、いろいろなことが見えてきますね。まず、医学部入試においては、数学の出題範囲の大半が、「数学Ⅰ、数学Ⅱ、数学Ⅲ、数学A(全範囲)、数学B(数列・ベクトル)」となっていることがわかります。理系の最難関学部にふさわしく、高校数学で習うほぼすべての分野が出題範囲になっています。一方で、数学Bの「確率分布と統計的な推測」を明確に出題範囲としているのは、鹿児島大学だけでした。それも選択問題としての出題範囲です。ということは、大半の医学部受験生にとっては、この分野を勉強する必要がないと言うことがわかります。

旧課程履修者に対しての経過措置を見ると、各大学ごとに特徴があらわれていますね。私立大学では受験生にわかりやすく出題範囲設定してくれているところが多いです。一方、国公立大学では、お役所的な書き方が多い(そりゃそうか)。そして、何も言ってくれない大学もある・・・。

「新課程と旧課程の共通範囲から出題する」

このように言ってくれると、受験生にとってはわかりやすくていいですね。自分の勉強している分野が入試に出るのか出ないのか、もやもやした気持ちのまま勉強しなくて済みます。もちろん、分野が狭くなる分、より学習内容の深いところでの勝負となりますので、受験生にとって決して楽になるというわけではありません。それでも、わかりやすいというのはいいことです。

「高等学校旧教育課程履修者に対する経過措置は講じません」

こう言い切った唯一の大学は、東京慈恵会医科大学です。これはこれでわかりやすく、爽快でもあります。もちろん浪人生にとって受験の敷居が高くなりますので、もしかしたらチャンスになるかも!?

「新旧教育課程別に出題し、選択解答させることもあります」

このようなことが書いてあれば、現役生は新課程の学習内容を、浪人生は旧課程の学習内容を、しっかり勉強するしかありません。この場合難しいのは、旧課程の出題範囲を明示していない大学が多くあるということです。そのような大学では、旧課程にあって新課程にない「行列とその応用」をどのように扱ったらいいのか、受験生は悩むところです。

「旧教育課程履修者に配慮する」

配慮すると言っているのだから配慮してくれるのでしょうが、その配慮がどのようなものになるのかはっきりしません。以下のような配慮が考えられます。

  • 新旧課程共通範囲から出題する。
  • 新旧課程別に選択問題とする。
  • 新旧課程どちらの固有分野でも解けるものを出題する。

これらのうちいずれのものになるかは、それぞれの大学の過去の傾向や問題作成能力などから分析することになりますが、一般の受験生にとっては難しいですね。この場合においても、旧課程にあって新課程にない「行列とその応用」をどのように扱ったらいいのか、受験生は悩むところです。

先ほどから何回か出ていますが、今回の学習指導要領の改訂の数学における最大の注目点は、「行列とその応用」が無くなり、「複素数平面」が加わったことです。この状況は、旧旧旧課程(昭和53年文部省告示、一次変換有り、複素平面無し)から旧旧課程(平成元年文部省告示、一次変換無し、複素平面有り)に切り替わった1997年度入試に似ていると思います。 1997年度センター試験の数学が旧課程の科目を平行して実施したのも、 2015年度と似ていますね(そしてこの年のセンター数学は大事件となりました)。ところで、この年の大阪大学(理系)の入試問題に次のようなものがありました。

平面上において,直線 l l 上にない点Aをとる.

直線 l 上に点 B を線分 AB と直線 l が直交するようにとり,点 B を中心として直線 l θ だけ回転して得られる直線を m とする.

直線 l 上にない点 P をとり,直線 l に関して P と対称な点 Q をとる.また点 A を中心として点 Q を角度 2θ だけ回転して得られる点を R とする.

このとき線分 PR の中心 M は直線 m 上にあることを証明せよ.

ご覧の通り、平面上の回転移動に関する問題です。回転運動は、行列を用いた一次変換でも表すことができますし、複素数平面でも表すことができます。 「新旧課程どちらの固有分野でも解けるもの」 とは、まさに回転移動のことになります。

このような、かなり古い問題の分析をも可能にするために、メビオでは長年培ってきたデーターの蓄積があります。それらのデーターを参考にしながら、この混乱の2015年度入試においても、それぞれの受験生の志望や学力にあった最適な戦略がとれるように、講師間で議論を繰り返しています。

また、数学Aでは「整数の性質」というものが加わりました。そしてほとんどの教科書で「合同式」というのが掲載されています。

27 ≡ 3   ( mod 8 )

というやつです。浪人生でこれを初めて見た人は、「なんだこれは!?」と面喰らってしまうかもしれませんが、何のことはない、

27 − 3 は 8 の倍数である

ということを言っているに過ぎません。そしてこれがなかなか便利な道具なのです。たとえば2010年島根大学(医)の次の問題がありました。

数列 {an} を初項 3,公比 3 の等比数列とし,数列 {bn} を初項 11,公差 8 の等差数列とする. {an} と {bn} に共通に含まれる項を小さいものから順に並べて得られる数列 {cn} の一般項を求めよ.

この問題、合同式を用いて解くと以下のように簡単にできてしまいます。

bn = 8n + 3 となるので,ある整数 x が数列 {bn} に属しているための必要十分条件は,

x ≡ 3   (mod 8 )   かつ   x が11以上

である.一方, an = 3n であり,

32 ≡ 34 ≡ 36 ≡ 38 ≡ 310 ≡ … ≡ 1   (mod 8 )
31 ≡ 33 ≡ 35 ≡ 37 ≡ 39 ≡ … ≡ 3   (mod 8 )

となっているので, {an} の項のうち {bn} に属しているもの,すなわち数列 {cn} の項は,

33 , 35 , 37 , 39

となる.したがって、 cn = 32n + 1 である.

この問題を解くのに合同式を使わないとなると、二項展開か数学的帰納法あたりで解くことになるのでしょうが、いずれにせよ面倒なことになります。

このように、合同式はそれほど難しいものでない上に他の分野でも役に立つことがある便利な道具です。見たことがないからと言って拒絶せずに、ちょっと触ってみてもいいかもしれません。

「ゆとり教育」や「脱ゆとり」など、政治家や役人たちの気まぐれに振り回され、受験生にとってはほんとうにいい迷惑だと思います。常に進取の気概を持ち、自分を高める努力を怠らないことで、どのような制度になろうとも強い気持ちを持って目の前の困難を克服して欲しいと思います。

そしてそのように努力してきた経験が、みなさんが医師になったときにかけがえのない財産となると思います。