2026年 東京大学理系入試問題のフカヨミ|メビオ数学科 亀井
2026年 東京大学理系入試問題のフカヨミ|メビオ数学科 亀井
うんちく・小ネタ
入試
メビオ講師コラム
2026/05/27(水)
(最終更新日2026/05/28)
東京大学 2026年度理系入試問題より
メビオでは問題入手可能な私立医学部では解答速報を行っています.東京大学の解答速報は行っていないのですが,2026年の理系数学大問6(2)が超難問だと話題になっているようですので解いてみました.netで散見される解法は確かに非常に難しそうなものが多いですが,完全帰納法を使うと見通しよくすっきりと証明できます.
完全帰納法とは, $n$ 未満でのすべての $k$ に対する命題 $P(k)$ の成立を仮定したうえで, $P(n)$ の成立を導く手法です. $P(n)$ と $P(n+1)$ のつながりが強くない場合にも使用できます.
完全帰納法は奈良県立医科大学(後期)などでも利用する機会の多い手法ですので,難関校を受験する皆さんにはぜひ身につけておいてもらいたいと思い紹介することにしました.
東京大学2026年の理系数学大問6(2)は次の通りでした.((2)のみ抜粋しています.)
$n$ を正の整数とする.$n$ の正の約数のうち,3で割って1余るものの個数を $f(n)$ ,3で割って2余るものの個数を $g(n)$ とする.$f(n) \geqq g(n)$ を示せ.
解答を示します.(「です,ます調はしばらく休みます.」)
以下では合同式の法はすべて3とする.すべての素数を次の3つの集合に分類する.
- $P_0=\{3\}$
- $P_1=\{p \text{ 素数 } | \ p \equiv 1\}$
- $P_2=\{p \text{ 素数 } | \ p \equiv 2\}$
また,自然数 $n$ に対して $Q(n)=\{n \text{ の素因数}\}$ と定める.( $Q(1)=\emptyset$ である.)
すべての自然数 $n$ に対する $f(n) \geqq g(n)$ の成立を数学的帰納法(完全帰納法)で証明する.
-
(i) $f(1)=1, \ g(1)=0,$ $f(2)=1, \ g(2)=1,$ $f(3)=1, \ g(3)=0$
より $n \leqq 3$ の場合 $f(n) \geqq g(n)$ は成り立っている. -
(ii) $n$ を4以上のある自然数として $1 \leqq k \leqq n-1$ における $f(k) \geqq g(k)$ の成立を仮定する. $f(n) \geqq g(n)$ の成立を示したい.
(a) $Q(n) \cap P_2 = \emptyset$ の場合, $g(n)=0$ だから $f(n) \geqq g(n)$ は成り立つ.
(b) $Q(n) \cap P_2 \ne \emptyset$ の場合, $p \in Q(n) \cap P_2$ として $n=p^m \cdot n_1$ ( $m \geqq 1$ , $p$ と $n_1$ は互いに素)とおく. $n_1 < n$ だから帰納法の仮定により $f(n_1) \geqq g(n_1)$ は成り立っている.
$p^j$ を $p^m$ の約数, $b$ を $n_1$ の約数として, $n=p^m \cdot n_1$ の約数 $p^j \cdot b$ について考える.
(b1) $m=2l$ の場合
$$ p^j\cdot b \equiv 1 \iff (b \equiv 1\ \text{かつ}\ j=0, 2, \dots, 2l) $$
$$ \text{または}\ (b \equiv 2\ \text{かつ}\ j=1, 3, \dots, 2l-1) $$
$$ p^j\cdot b \equiv 2 \iff (b \equiv 2\ \text{かつ}\ j=0, 2, \dots, 2l) $$
$$ \text{または}\ (b \equiv 1\ \text{かつ}\ j=1, 3, \dots, 2l-1) $$
$j=0, 2, \dots, 2l$ は $l+1$ 個であり, $j=1, 3, \dots, 2l-1$ は $l$ 個であるから $f(n)=(l+1)f(n_1)+lg(n_1)$ , $g(n)=(l+1)g(n_1)+lf(n_1)$ となり,
$$ f(n)-g(n) = \{(l+1)f(n_1)+lg(n_1)\} - \{(l+1)g(n_1)+lf(n_1)\} $$
$$ = f(n_1)-g(n_1) \geqq 0 $$
(b2) $m=2l-1$ の場合
$$ p^j\cdot b \equiv 1 \iff (b \equiv 1\ \text{かつ}\ j=0, 2, \dots, 2l-2) $$
$$ \text{または}\ (b \equiv 2\ \text{かつ}\ j=1, 3, \dots, 2l-1) $$
$$ p^j\cdot b \equiv 2 \iff (b \equiv 2\ \text{かつ}\ j=0, 2, \dots, 2l-2) $$
$$ \text{または}\ (b \equiv 1\ \text{かつ}\ j=1, 3, \dots, 2l-1) $$
$j=0, 2, \dots, 2l-2$ は $l$ 個であり, $j=1, 3, \dots, 2l-1$ は $l$ 個であるから $f(n)=lf(n_1)+lg(n_1)$ , $g(n)=lg(n_1)+lf(n_1)$ となり,
$$ \begin{aligned} f(n)-g(n) = \{lf(n_1)+lg(n_1)\} - \{lg(n_1)+lf(n_1)\} = 0 \end{aligned} $$
(b1), (b2) のどちらの場合も $f(n) \geqq g(n)$ は成立する.
以上,数学的帰納法によって証明された.(証明終)
いかがでしょうか.記述が抽象的なので,やっぱり「超難問」に見えるかもしれませんね.でも例を挙げて具体的に説明すると簡単です.
$n=123456 \times 5^4$ としてみましょう. $f(n)$ , $g(n)$ のどちらが多いかが問題です.
完全帰納法の仮定により, $f(123456) \geqq g(123456)$ です.つまり,123456の約数のうち3で割って1余る数(グループ $F_1$ とします)の個数 $x$ の方が,123456の約数のうち3で割って2余る数(グループ $G_1$ とします)の個数 $y$ より多いと仮定します.
$n$ の約数のうち3で割って1余る数(グループ $F$ )の個数と3で割って2余る数(グループ $G$ )の個数はどちらが多いでしょうか.
$F_1$ のメンバーに $5^0,\ 5^2,\ 5^4$ をかけると $F$ のメンバーになりますが, $F_1$ のメンバーに $5^1,\ 5^3$ をかけると $G$ のメンバーになります.ここまでだと $F$ の数の方が $G$ よりも $x$ 個多いです.
逆に $G_1$ のメンバーに $5^0,\ 5^2,\ 5^4$ をかけると $G$ のメンバーになりますが, $G_1$ のメンバーに $5^1,\ 5^3$ をかけると $F$ のメンバーになります.この部分だけを考えると $G$ の方が $F$ よりも $y$ 個多いです.
両方を考慮すると $F$ の方が $G$ よりも多いことがわかるでしょう.これを正確に述べたのが上記解答です.大筋が分かったらもう一度読み返してみてください.何をしているかわかると思います.
補足
実はこの解法は次の (3) をスマートに解くためにも役に立ちます.興味のある方はぜひ挑戦してみてください.
$g(n)=15$ であるとき, $f(n)$ がとりうる値を求めよ.