【特別対談】命の最前線から、未来の医療人へ。

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大西幸作(おおにし こうさく)医師

大阪労災病院 消化器内科 副部長 兼 大西内科クリニック 院長

2003年西大和学園高等学校卒、同年神戸大学医学部入学。2010年同大学卒業後、大阪急性期・総合医療センターでの初期研修・消化器内科勤務を経て、2015年大阪労災病院 消化器内科へ。2025年より現職。日本消化器内視鏡学会専門医、日本胆道学会指導医、日本膵臓学会指導医など、消化器領域のエキスパートとして多数の資格を有し、学会やセミナーでの講演も精力的に行う。

医師という仕事の厳しさ、そして、それを凌駕するやりがいとは。
メビオで学び、現在は大阪労災病院消化器内科副部長とクリニック院長として医療現場を牽引する大西幸作医師に、医師を志す若者へのメッセージと、ご自身の原点であるメビオでの学びについて、当時の担当講師である髙橋・上田・橋本の3名が話を伺いました。

命の最前線で見た、医師という仕事の現実と使命

──大西くん、本日はお忙しい中ありがとうございます。大病院の副部長とクリニックの院長を兼任され、まさに医療の最前線でご活躍ですね。

 先生方にお目にかかるのは久しぶりですね。確かに二足の草鞋で忙しいのは間違いないのですが、私自身は動き回っている方が性に合っているようです。クリニックを開業していた父親が62歳の若さで急逝してしまったので、悩んだ末にどちらも諦めることができず、現在のような勤務形態になりました。多方面の方々に支えられ、なんとか現在のスタイルで間もなく7年になろうとしています。

──お父様が若くして亡くなられたのは大変でしたね。勤務医と開業医の両方をやろうとする人は医師の中でも少ないのではないでしょうか。

 確かにあまり聞いたことはありませんが、私もまだ若手と思っていますので高度急性期医療と地域医療の双方に携わっていられることは貴重な経験だと思っています。父親は循環器内科医でしたが、私自身は初期研修を経て消化器内科の道を選び、胆膵内視鏡医として活動しています。ありがたいご縁の連続で、今では学会のセミナーで専門医を聴衆に迎え、講師を務めさせていただくことも多くなりました。先生方も僕がこうなるなんて思わなかったでしょう?(笑)

──まったく思いませんでした(一同笑)。高度急性期医療の魅力はなんでしょうか?

 医師は技術職であり、職人です。私は先生方がご存知のように勉強が好きな方ではありませんでしたので(笑)、手技が多い内視鏡医の道を選びました。その中でも胆膵内科は緊急疾患も多く、目の前の患者さんを『救命できた!』と実感できる機会が多いのはやはり医師冥利に尽きます。また消化器内科は癌患者さんと向き合う機会も多く、救命だけではなく、その人の最期まで一緒に寄り添うことができるのも、また一つのやり甲斐です。患者さんのご家族に「ありがとうございました」と仰っていただけると、やはり感慨深いものがあります。

──本当に医師っぽい話になってきました。手術や癌の治療には常に進化が求められる厳しい世界ですよね。

 医師国家試験の内容もかなり難しくなっていると思います。私はもう一度受けて通る気はあまりしません(笑)。病気にもトレンドがあり、消化器領域で言えばピロリ菌除菌で胃癌は減り、C型肝炎の治療薬ができて肝臓癌の患者さんは減っています。その代わり、高齢化社会に伴い胆道癌や膵臓癌などが増え、今は「胆膵(たんすい)」領域が非常に注目されています。このように、医療の常識は数年で変わる。だから、変化に対応して現場で「今、何ができるか」が問われ続けます。そのためにはやはり臨床現場で日々努力し続けることが必要です。

──大変な仕事ですね。敢えてお伺いしますが、やはり収入面ではその分安定しているのでしょうか?

 あまり夢をなくすようなことを言いたくはないですが、昔のように「医師は儲かる」という時代は終わっています。日本の医療費は切迫しており診療報酬は下がり、保険制度も維持が難しくなっています。医療機関の6割が赤字で、私たちも近年ボーナスは削られて一般企業の人たちよりも少ないぐらいです。医療を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、現場で働く医師の負担が大きくなっているのが現実です。

──医師のボーナスが削られるのは衝撃ですね。それでも最前線に立ち続ける原動力は何なのでしょうか。

 やはり「使命感」と「倫理観」でしょう。それがないと続けられません。目の前で助けを求めている人がいて、その命を救うために、自分が培ってきた技術と知識を総動員する。症例を積み重ね、修羅場をくぐることでしか医師は成長できません。しんどい思いをした分だけ、患者さんを救えたときの喜びは大きい。国が医師の使命感と倫理観に甘え続けている現状はどうかとは思いますが、きれい事と言われようとも人の命に立ち会うことができるのは医師という仕事の醍醐味です。

学歴ではなく、何をしてきたかがすべて

──メビオにも、様々なバックグラウンドを持つ生徒が医学部を目指して集っています。

 ぜひ伝えてほしいのですが、医師免許に優劣はありません。大切なのは医師としてどのように仕事をするか、です。私のように親御さんが医師の方も多いでしょうが、これからの世の中、「なんとなく医学部に入る」ではいけないと思います。

──出身大学で差があるのでは、と気にする受験生も多いですが。

 全く関係ないですね。私が専門とする胆膵領域でいま学会をリードしている大学教授陣は、むしろ私立大学出身の方が多いですよ。私は先生方のおかげで神戸大学出身ですが、ただの一地方大学ですし、バイトでバーテンダーに明け暮れて留年も経験しています。ですが、職場ではいわゆる旧帝大と言われる阪大出身の研修医よりよっぽど仕事が早い自信がある(笑)。臨床現場においては、出身大学や学歴に関わらず臨機応変に仕事をできるかがすべてです。

──大西くんも、座学は苦手でしたよね(笑)。

 座学は苦手でしたね〜ご存知の通り(笑)。留年しましたし国家試験もギリギリでの合格でした。でも現場で症例と向き合いその一つ一つを頭に叩き込んでいくことが実臨床では最も役立ちます。「腕を磨きたかったら人の症例を奪ってでもやれ」という師匠の言葉を守り、必死に技術も磨いてきました。その結果、今では胆膵内視鏡医のトップクラスが集まる場にも呼んでもらえるようになりました。勉強ができなくても、志を持って現場で学べば道は開けます。ちなみに留年はしましたけど今でもバーテンダーとしての人脈もちゃんと生きているんですよ(笑)。

──求められる医師像も時代と共に変わっていくのでしょうか。近年、AIが医師の仕事を奪うという話も聞きますが、その点はいかがですか。

 これは医療業界だけではありませんが、人間の仕事のかなりの部分がAIに代替され得ると思います。例えば糖尿病の患者さんに対して、AIがデータを元に最適な薬剤を決めることはできると思いますが、果たしてそのAIが患者さんの『治療』を完遂できるかは不明です。患者さんはやはり人間ですので、地域医療においてはその人の生活背景にまで踏み込んで話を聞き、寄り添うことが大切です。これは人間にしかできない強みだと……言いたいところですが、これも少し雲行きは怪しくなってきました。今やChatGPTと延々と会話する人もいますし、極端な話では恋愛してしまう人もいるらしい。だからこそこれからの医師は、AIが進歩することを見越した上で、「じゃあ人間である医師はどう進歩すべきか」を常に考えていないといけません。ただし、手技の面での話をすれば、AIがかなり進歩したとしても私たちのような内視鏡や外科手術などの領域で取って代わるにはまだしばらくかかるでしょう。ここは職人としての強みだと思っています。

早くビジョンを持て──メビオで学んだ原点

──医師になってからのキャリアについて、学生のうちから考えておくべきことはありますか?

 とにかく早めに「医師としてのビジョンを持つこと」ですね。大学4年生くらいまでには何科に進みたいか大筋を決めておく方が良いと思います。マッチング制度のもとで人気の研修病院に行きたければ、大学5年生くらいから何度も見学に行く。熱心な学生は今これを当たり前のようにしています。ですので見学に行くだけでなく、行った先で現場の医師たちに自分の魅力をアピールできることが大切です。私の場合はバーテンダーとして一軒のお店の経営を任せられていたので、今でもその頃の人脈を活かして、大学教授にお店を紹介したりできるのはアピールポイントになっています。

──学生時代のバイトや部活動も大切なんですね。

 医学部生のバイトは家庭教師になりがちですが、ぜひ飲食業に従事することをお勧めします!私のころは最初、時給700円でしたが、接客技術、人とのつながり、そして経営の視点などお金では買えない多くを学ぶことができました。医学部や医療業界はどうしても狭い世界ですので、接客業を経験しておくことで、患者さんへの接し方や、職場での人間関係の作り方などを学ぶことができます。私の場合は父の急逝を受けてクリニックを継承したときも、この経験があったからなんとか対処することができました。飲食業でなくても良いですが、何か一つのことに必死に打ち込むのは学生時代にやっておいて損はないと思います。

──最後に、大西くんにとってメビオはどんな場所でしたか?

 私はメビオがなかったら絶対に医師になれていません。断言できます。中学受験で大阪星光学院と東大寺学園に落ちて、当時は滑り止めだった西大和学園に通っていましたが、学校での恩師には高2のときに、このままでは医学部は無理やぞ、と言われていました。僕が医学部に入れたのは、本当にメビオのおかげです。

──そう言っていただけると嬉しいです。当時のメビオはどうでしたか?

 教務の先生が、僕の性格や特性をちゃんと見抜いてくれて「君はこれだ」と、個別授業とクラス授業を最適に組み合わせたカリキュラムを組んでくれたんです。私の性格上、自分に合わないことには文句を言って自分が心酔する先生の言うことでないと納得しないという生意気な生徒でしたから、この最適化されたカリキュラムを組んでくださったことがすべてでした。担当の先生方がみんな年が近くフレンドリーで、本当に親身になって授業や相談にも乗ってくれました。当時高校生でしたから、恋バナなんかもした気がしますね。そういや髙橋先生に貸した「ろくでなしブルース」(漫画)は10年後にやっと返ってきましたけどね(笑)。

──すまん(笑)。

 そういう「人間くさい」ところなんです、メビオは。講師同士の仲も良く、連携して生徒一人ひとりの「行間」を読んでくれるところは随一だと思います。生徒相手にただ勉強を教えるのではなく人として向き合い、人生を、真剣に一緒に考えてくれる。この懐の深さが、高校生ながらに「すごいな」と思っていました。人生は歯車みたいなもので、メビオの先生方が僕の特性を見抜いてくれたことで歯車がカチッと噛み合い成長に繋がったんだと思います。だからあの生意気だったガキンチョが、今こうして全国レベルの医師として何百人もの命を救う仕事ができている。AIがどれだけ発達しても、最後は「人と人」。メビオが育てているのは、その先にある患者さんを支える「真の医療人の心」だと思います。私の恩師である髙橋、上田、橋本先生、このお三方がまさかメビオを支える立場になられるとは思っていませんでしたが、この3人が引っ張るメビオなら、間違いないでしょう。

──ありがとうございます。それでは最後に、医師を目指す受験生の皆さんにメッセージをお願いします。

 大学受験はゴールではなく、単なる通過点です。燃え尽きている暇はありません。医師になってからが本当のスタート。どれだけしんどい修羅場をくぐって、自分の血肉にしていくか。医師は、人の役に立てる本当に素晴らしい仕事です。「志」さえあれば、大学の名前も座学の成績も関係ありません。皆さんがメビオでその志を燃やし、いつか医療の現場でお会いできる日を楽しみにしています。