医学部志望理由書に書く内容は3点のみ!その内容を詳しく解説
受験計画
2019/05/28(火)
(最終更新日2025/06/09)
医学部入試では志望理由書の提出を求められる場合があります。医学部は、人の命を預かる「医師」を育成する場所です。そのため、「なぜ医師を目指すのか」「どんな思いで医学部を志望するのか」といった考えをきちんと持っているかどうかが重視されます。
この記事では、志望理由書がなぜ必要とされるのか、どんな内容を書くべきかについて、詳しく解説します。志望理由書を書くときの参考にしてください。
目次
1.医学部受験の志望理由書とは?
2.医学部受験で志望理由書の提出が求められる理由
2-1熱意や将来性を測るため
2-2医師としての資質を確かめるため
2-3大学への理解度と相性を測るため
3.志望理由書を書く前の準備
3-11.自己分析を行う
3-22.将来なりたい医師像を整理する
3-33.志望大学について徹底的に研究する
3-44.伝わる文章構成の基本を押さえておく
4.志望理由書に盛り込むべき主な内容と例文
4-1医師を目指す理由
4-2その大学を志望する理由
4-3大学で取り組みたいこと
4-4理想の将来像
5.医学部受験に志望理由書が必要な大学
6.まとめ
医学部受験の志望理由書とは?
志望理由書の提出が求められるのは、医学部に限ったことではありません。ただし、医学部では、他の学部と少し目的が異なります。医学部受験における志望理由書の立ち位置は、ただ大学の志望理由を問うだけではなく「受験生が本当に医学に興味があり、努力して医師になりたい熱意があるのかどうか」「医師としての資質を備えているか」を見極めるための重要な判断材料となります。
医学部の役割は医学という学問を教授するだけでなく、将来の優秀な医師を育成することです。医学部での生活は授業や実験、実習のみならず試験も多く、なかなかキャンパスライフを楽しむ余裕はないかもしれません。中には、その厳しさに耐えられず途中で挫折してしまう学生もいます。医学部は学生時代でさえこうした厳しい環境に身を置き、貪欲に学び続ける姿勢が求められます。
入試科目の学力を見ただけでは、本当に医師にふさわしい人物かどうかを判断することはできません。命に関わる仕事を目指す者として、患者と向きあい、常に学び続けることができるのかを、志望理由書を通して推し測っているのです。
大学によっては長文の志望理由書を求められる場合もありますが、多くは200字程度が目安です。長くても短くても、必要な情報が簡潔に記載されていなければなりません。
医学部受験で志望理由書の提出が求められる理由
医学部受験で志望理由書の提出が求められる理由を、さらに具体的に解説します。
熱意や将来性を測るため
医学部が志望理由書を課す理由の一つは、受験生の医学部への入学意欲や、将来医師としてどのように社会に貢献したいかという熱意、具体的な将来像を把握するためです。「両親が医師だから」「自分自身、医師に助けられた経験があるから」といった志望理由はよく見られますが、それだけでは単なるエピソードにとどまり、説得力に欠けることがあります。
大切なのは、その経験を通して「なぜ自分は医師を目指すのか」という気持ちを深く考え、自分の将来像までしっかりと描いて文章にまとめることです。将来どんな医師になりたいのかが具体的に伝わる志望理由書であれば、より高く評価される可能性が高まります。
医師としての資質を確かめるため
志望理由書が必要な理由には、医師としての資質を確かめる側面もあります。医師は人の命や健康を預かる、大きな責任が伴う仕事です。「医師の抱える責任の重さを理解しているか」「倫理観を持っているか」といった人間性に関わる要素は、将来の医師を輩出する大学としては確認しておかなければなりません。
表面的な理由だけでなく、医師という職業をどう捉えているのかなど、本質的な理由を自分の言葉で説明することが求められます。書かれている直接的な内容だけでなく、文章の端々に見られる人間性も見られていると考えておいた方がよいでしょう。
大学への理解度と相性を測るため
志望理由書が必要とされる理由は、大学との相性を図るためでもあります。入学してから「自分の考え方と異なる」「なじめない」として辞めることになれば、本人にとって大切な時間を無駄にすることになります。大学としても、本意ではありません。そのため大学の教育理念や特色を理解しているか、興味や将来の目標と大学の方向性が合致しているかを問うことは、大学にとっても受験者本人にとっても重要なのです。
大学が公表しているアドミッションポリシーやカリキュラム内容をよく理解し、それに合致するような具体的な志望理由を書きましょう。もちろん嘘をついてまで大学の考えに合わせる必要はありません。自分の考えに合う大学を選ぶことが大前提です。
志望理由書を書く前の準備
志望理由書を書く際は、まず以下のような準備をしましょう。事前準備をして書く内容をまとめておけば、過不足や矛盾のない志望理由書を作成できます。
1.自己分析を行う
志望理由書を書く前に、まず自己分析を行いましょう。「なぜ医師になりたいのか」を、漠然とした理由だけでなく深く掘り下げて考えます。「幼少期の経験」「医療に関心を持った原点」「医師を志すようになった具体的な出来事」などがあるなら、それを起点としてどうして自分も医師になりたいと思ったのか、さらに詳しく考えてみましょう。
何か特別な出来事がなくてももちろん問題ありません。たとえ小さなきっかけでも、医師を目指すと決意した理由はあるはずです。そのときの心情や、医師になりたいと考えるに至った経緯などを理論的に説明できるように掘り起こしておきましょう。
2.将来なりたい医師像を整理する
次に医師としての将来像を整理します。「臨床医を目指す」「研究医を目指す」「開業する」「大規模病院に勤務する」など、現時点で自分が何を目指したいか考えてみましょう。その上で、さらにやりたいことを深掘りします。
臨床医であればどのような専門分野を専攻したいのか、なぜその専門分野に関心があるのかも考えてみましょう。研究医を目指すのであれば、現時点でどのような研究テーマに興味があるか、どのような研究がしてみたいかまで考えておくと、あとで文章にした際に内容の厚みが増します。他にも「地域医療に貢献したい」「国際的な医療活動に関わりたい」など将来像を書き出し、理由を深掘りしておきましょう。
3.志望大学について徹底的に研究する
志望理由書を書く前に、志望大学についても徹底的に研究しておきましょう。「入学を希望している、でも志望大学について詳しく知らない」状態では、「なぜこの大学を選んだのか」という根本的な志望理由を書けません。
大学の「アドミッションポリシー(入学者受け入れ方針)」や「カリキュラムポリシー(教育課程編成・実施方針)」、「ディプロマポリシー(卒業認定・学位授与方針)」の3つは読み込み、どこに共感を持ち何に引かれたのか、自分の考えをまとめてアウトプットできるようにしておきましょう。
4.伝わる文章構成の基本を押さえておく
書く内容がある程度まとまったら、読み手に伝わる文章の書き方も学んでおきましょう。ほとんどの場合で、志望理由書には文字数や書くスペースが決められているので、その範囲内で端的に分かりやすくまとめなければいけません。
文章をうまくまとめるのが苦手なら「PREP法」を使って書くのがおすすめです。PREP法は「Point(結論)、Reason(理由)、Example(例)、Point(結論)」の順に書く文章構成法です。まず結論を述べ、その後に理由を説明すれば、読み手が理解しやすい文章になります。さらに具体的な例を挙げて内容を掘り下げることで、志望動機に対して深く考察していることが伝わります。そして最後にもう一度結論を伝えることで、説得力を増幅させるのです。PREP法の型に落とし込めば、文章を書くのが苦手でも分かりやすく伝わる文章を作成できるでしょう。
志望理由書に盛り込むべき主な内容と例文
ここからは志望理由書に盛り込むべき、具体的な内容と例文を紹介します。
医師を目指す理由
医師を目指す理由は、志望理由書に忘れず入れたい内容です。医師を志すようになった減点や理由を、具体的な内容を交えながらまとめましょう。
例えば幼少期の病気の経験や、部活などでスポーツをしていてお世話になった医師がいたなど、自分だけの経験やエピソードを交えて書くことが大切です。「人の役に立ちたいから」といった抽象的な理由で終始しないよう注意しましょう。
例文
「医師を目指す理由」の例文を紹介します。実際の志望理由書では、他の内容も交えながら書き上げましょう。
私は将来、患者の心に寄り添う総合診療医として地域医療に貢献することを目指しています。きっかけは、幼少期に喘息で入退院を繰り返した経験です。不安な入院生活の中で、担当医の温かい言葉と適切な治療が私に希望を与えてくれました。特に記憶に残っているのは、子どもである私の話に真摯に耳を傾け、病気だけでなく私という人間全体を診てくださった医師の姿勢です。貴学での学びを通じて、患者さんの心と体、両方を癒せる医師になりたいと考えています。
その大学を志望する理由
大学を志望する理由は、「なぜその大学でなければならないのか」という明確な理由を盛り込む必要があります。大学の特色や強み、自身の関心事、将来の目標などと関連付けて具体的に説明することが大切です。例えば、大学で行われている研究や教育プログラム、国際実習、早期臨床実習など自身が魅力を感じた取り組みに触れると、その大学に関心を持っているという熱意が伝わりやすくなります。
また、魅力に感じた取り組みを紹介する際は、それによって自分がどう成長したいと考えているか、将来像とともにまとめると内容に厚みが出るでしょう。
例文
「大学を志望する理由」についてまとめた例文を紹介します。
貴学の「患者さんの生きがいを大切にする医療」という理念に深く共感し、志望いたしました。私自身、医師の本質は単なる疾病の治療ではなく、弱い立場にある患者さんの味方となり、人間らしく生きる支えとなることだと考えています。貴学が1年次から取り入れている医療と介護の体験実習は、早期から医師としての自覚を育む素晴らしいカリキュラムだと感じています。人としての倫理観と医療従事者としての自覚を育みながら、高度な医学知識と技術を身につけられる教育環境に強く引かれました。貴学での学びを通じて、病気と闘う患者さんに寄り添い、生きる希望を共に見出せる医師になりたいと考えています。
大学で取り組みたいこと
大学に入学してから取り組みたいことを具体的に書くことは、やる気や目的を示す上で有効です。興味のある専門分野や研究テーマ、参加したいボランティア活動、海外留学、地域活動など、大学が提供しているカリキュラムや活動から注目しているものを取り上げましょう。そしてそれに取り組むことで自分が描く将来の医師像にどう近づけるのか、どう自分に役立つと考えていのるか、詳しくまとめてみてください。
例文
「大学を志望する理由」についてまとめた例文を紹介します。
医学部に入学して勉強に励むことはもちろんですが、私は医師として視野が狭くならないよう、大学での勉強以外にもさまざまなことに積極的に取り組みたいと考えています。貴学には、休学せずに留学できる医学インターンシップ制度があると知り、大変興味が湧きました。留学で現地の異なる医療制度や考え方に触れられることを想像すると、期待に胸が膨らみます。現地の学生とも意見を交わし、偏らない広い視野やマインドを身につけ、医学の最前線で活躍できる基礎を築きたいと考えています。
理想の将来像
具体的な理想の医師像を盛り込むことで、志望理由書により深みを持たせることができます。
例えば、再生医療の研究者や地域医療に貢献する医師、国際的に活躍する医師など、具体的な人物を取り上げてみましょう。採点する側もイメージがしやすくなる上、「医師になる」ことを真剣に考えていると伝わりやすくなります。取り上げた人物の行った研究や活動内容にも触れましょう。そしてそれがどのように自分の心を動かしたのか、丁寧に書くことが大切です。
例文
「理想の将来像」についてまとめた例文を紹介します。
貴学の小児科学講師の山田先生は、長く国境なき医師団の活動に参加されていたと知りました。現地で出会った子どもたちのこと、生活環境、医療提供の難しさなど、貴学ホームページで紹介されていた経験談は、どれも興味深いものでした。特に山田先生がおっしゃっていた「現地で活動していると医師の基本に戻れる」は、深く感銘を受けた言葉です。医師としての知識と経験を生かし、患者さんの様子とお話だけで診断する姿は憧れます。もちろん最新機器を使った検査は必要ですが、将来は山田先生のように医師としての基本を大切にし、信頼される医師になりたいと考えています。
医学部受験に志望理由書が必要な大学
医学部受験に志望理由書が必要な大学をいくつか紹介します。
国公立大学
大学名 | 文字数など | 志望理由書の内容 |
---|---|---|
東京大学 | 400字以内 | 医学を志すに当たっての理由および自己評価など |
横浜市立大学 | A4用紙2枚 | 医学を志望する理由 医師や医学研究者として目指す目標 これまでに取り組んできたことで自身の成長につながったと思われること など |
九州大学 | A4用紙1枚 | なぜ本学科を志願するに至ったかを将来像も交えて記入 |
私立大学
大学名 | 文字数など | 志望理由書の内容 |
---|---|---|
順天堂大学 | 願書内記入欄 | これまでの活動や医学部を志望する動機、本学を志望する理由など |
東京女子医科大学 | 400字以内 | 医学部への進学理由と本学への進学理由 |
産業医科大学 | A4用紙1枚 | 「なぜ専門的な産業医を志望しますか」「なぜ産業医科大学を志望しますか」の2点に対する理由 これまでに教科の学習以外に学内外で行った活動 |
まとめ
医学部受験で志望理由書が必要な理由は、なぜ医師になりたいか、なぜこの大学を選んだのかなどを具体的に示すためです。志望動機を振り返り、深掘りして具体的な内容を交えながら熱意を込めてまとめるようにしましょう。
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