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2021関医前期 大問3のフカヨミ/物理科 講師 田中

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入試

メビオ講師コラム

2021/05/06(木)

 メビオ物理科の田中です。
本記事では、関西医科大学の2021年度前期入試の物理の問題より、大問3【フルートの問題を取り上げます。
ド、レ、1オクターブ上のミ、…など、フルートからどのような音が出るかという問題です。

フルートは誰もが馴染みのある題材ですが、物理の一分野の「波動」に関する正しい知識と、思考力が問われる問題になっています。

普段は物理に縁のない方も、ぜひ目を通してみて下さい。

以下、問題の詳細です。

 文部科学省の進める大学入試改革において、大学入試は「学力の3要素」を評価する方向に転換していくことが宣言されています。
2021年度の医学部入試では、この宣言を意識した出題が見られました。

「学力の3要素」のうちの1つである「知識・技能の確実な習得」が求められたことは従来と変わりませんが、もう1つの要素である「思考力・判断力・表現力」を評価する意図があると思われる問題が頻出しました。
この流れは今後も継続すると思われ、2022年度以降の医学部受験生にも大きな影響があることは間違いないでしょう。

そこで本記事では、このような問題の例として、冒頭で紹介したフルートの問題を取り上げます。
ただし、特に思考力・判断力を要する「問3」を解くのに必要な部分のみ掲載します。

2021年度関西医科大学一般選抜前期試験 大問3

フルートは管状の横笛で,図のように,吹き口部と管部からなる。奏者が吹き口に軽く唇を当て息を吹くことで吹き口部が音源となり,音源から出た音が管部で共鳴する。フルートの吹き口は奏者の口でふさがれることはないので,管部は両端が開いた開管とみなすことができる。管部の実効的な長さは,管部に設けられた指孔を開くことで短くすることができる。

 音名は音の振動数を表す。音名は国際式音名表記を用いると表1のようになる。指孔をすべて閉じた状態のフルートで出すことができる最も低い音は国際式音名のC4の音である。以下の問に答えよ。

(中略)

 音の振動数が,国際式音名の音の振動数の±1%の範囲であれば,その音名の音であるとする。

問 3

 C4からC7の音を出すことができるフルート奏者が,指孔を開き,管部の実効的な長さを問2の長さ(※メビオ注:フルートの管部の長さ)の2/3にしてフルートを吹いた。フルートから出る全ての音を,国際式音名を用いて答えよ。

(後略)

表1 国際式音名と振動数(Hz)の関係の表

  音名
順番 C D E F G A B
0 16 18 21 22 25 28 31
1 33 37 41 44 49 55 62
2 65 73 82 87 98 110 124
3 131 147 165 175 196 220 247
4 262 294 330 349 392 440 494
5 523 587 659 699 784 880 988
6 1047 1175 1319 1397 1568 1760 1976
7 2093 2249 2637 2794 3136 3520 3951
8 4186 4699 5274 5588 6272 7040 7902
9 8372 9397 10548 11175 12544 14080 15804

表1の見方 振動数が147Hzの音の国際式音名 D3

フルートから出る音を決定する要素は2つ

 以下、問3を考えます。
問題文には明記されていませんが、フルートから出る音を決定する要素は2つあります。その2つとは、指孔の閉じ方と吹き方です。
音楽、とりわけ管楽器についての素養がある方なら当たり前のことに感じるでしょうが、素養がない方にとってはピンと来ない部分でしょう。
以下では、この2要素を知らないという前提のもとで、どのように問題を解けばよいのかを見ていきます。

表1の読み取り方…振動数と音名の対応

 まず、表1の読み取り方を示します。
C、D、E、…という音名は、ド、レ、ミ、…に相当します。
例えばC3、D3、E3、…(131Hz、147Hz、165Hz、…)と音を出していくと、人間の耳にはド、レ、ミ、…と聞こえます。
そしてC0、C1、C2、…は、音名はドですが、1オクターブずつ高く(振動数でいうと2倍ずつ大きく)なっていきます。
このあたりも人によっては「知らない」と思うかもしれませんが、ここで大切なのは、知識ではなく、振動数と音名の対応を表から読みとることです。

問題文から推測する

 問題のリード文(冒頭の文)には「指孔を全て閉じた状態…最も低い音は…C4…」とあります。 
このことから、「管部の実効的な長さを固定していても、未知の要素Xによって音の高さが変わるのだな」と推測することができます。
物理で習っているように、長さが固定されている開管の場合、気柱が共鳴すると基本振動、2倍振動、3倍振動、…が生じます。
指孔をすべて閉じた状態では,要素Xを変えることによって

  • 基本振動(262Hz):C4
  • 2倍振動(523Hz):C5
  • 3倍振動(784Hz):G5

の音を出すことができるということですね。
ただし、問題文より、振動数の±1%の差は許容されることに注意が必要です。

問3を解く

 以上のことを踏まえると、問3の「C4からC7の音を出すことができるフルート奏者」という部分の意味が明確になります。
すなわち、管部の実効的な長さと要素Xの組み合わせにより、C4、D4、E4、…、C7と順番に音を出すことができる、という意味なのです。
表1で言えば、C4から始めて、1行ずつ右にたどっていけば、出すことのできるすべての音がわかります。

 問3の設定では、最も低い音がC4という状態から、管部の実効的な長さを2/3にします。
この状態で、C4、D4、E4、…、C7の音のうちどの音が出せるかを考えればよいのですが、最も低い音の振動数はC4の3/2倍、すなわち約392Hzとなり、この音は表1よりG4に当たります。
そしてG4の1、2、3、…倍の振動数を持つ音を表から読み取っていくと、

  • 基本振動(392Hz、G4)
  • 2倍振動(784Hz、G5)
  • 3倍振動(1175Hz、D6)
  • 4倍振動(1568Hz、G6)
  • 5倍振動(1976Hz、B6)

の音のみを出すことができるとわかります。(奏者がC7までの音しか出せないことから、6倍振動以降の音は出せません。)
答えはG4、G5、D6、G6、B6です。

まとめ

 本問の場合、管楽器についてよく知っていれば、すなわち知識・技能があれば、解答に役立ちますが、そのような受験者は多くはないでしょう。
たとえ管楽器についてよく知らなくても、問題文をよく読んで考えれば、すなわち、思考力・判断力を駆使すれば、正解することが可能であると理解できたでしょう。

 冒頭にも述べたように、2022年度以降も思考力・判断力あるいは表現力を評価する問題は頻繁に現れると思われます。
基礎的な知識・技能を身につけることが重要なのは言うまでもありません。
その上で、理解したことをノートにまとめたり、疑問に思ったことを調べたり、自分なりに仮説をたてて検証するなどして、思考力・判断力・表現力を磨いていくとよいでしょう。

医学部進学予備校メビオ 物理科 講師 田中