西日本の医学部における序列は? 偏差値ランキングや将来への影響も解説
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2025/07/25(金)
(最終更新日2025/07/25)
全国に数多く存在する医学部の中から志望校を選ぶ際は、偏差値や立地、学費など、さまざまな判断基準があります。その中でも「大学の序列が気になる」という受験生の方もいるのではないでしょうか。
医学界には、偏差値だけでは測れない、大学の歴史や伝統に根差した「序列」という概念が存在するといわれています。
本記事では、西日本の医学部を中心に、この序列がどのように形成されているのか、偏差値ランキングとの関係や将来への影響などを詳しく解説します。志望校選びの一つの視点として、ぜひ参考にしてください。
目次
1.医学部における序列とは?
2.【国公立編】西日本の医学部における序列
2-1.旧帝大グループ
2-2.旧制医科大グループ
2-3.旧設公立医大グループ
2-4.旧医専グループ
2-5.新設医大グループ
3.【私立編】西日本の医学部における序列
3-1.私立旧設グループ
3-2.総合大学グループ
3-3.私立新設医科グループ
4.西日本の医学部における偏差値ランキング
4-1.国公立のランキング
4-2.私立のランキング
5.医学部の序列が生徒の将来に及ぼす影響
5-1.関連病院への就職のしやすさ
5-2.医療関係者や患者さんからの信頼度
5-3.業界内でのネットワーク
6.まとめ
医学部における序列とは?
医学界には、国が定めた公式なものではありませんが、大学の設立経緯や歴史の長さ、これまでの医療業界への貢献度などに基づいた、慣例的な「序列」が存在するといわれています。例えば、日本で長い歴史のある「旧帝大」を頂点とした大学グループなどが有名です。これは、卒業後のキャリアや人事にも影響を及ぼす「学閥」と関連付けられて語られることもあります。
ただし、ここでいう序列は、現在の偏差値や入試の難易度と必ずしも一致しない点に注意が必要です。また序列が下とされているからといって、その大学の教育の質や研究レベルが劣っているわけではありません。あくまで、大学の成り立ちや歴史的背景に基づく一つの見方として捉えることが重要です。
【国公立編】西日本の医学部における序列
西日本の国公立大学医学部における序列は、その設立の歴史的経緯と密接に結びついており、日本の近代医療史そのものを反映しているといっても過言ではありません。それぞれの大学グループがどのような役割を担って誕生し、現在に至るのかを知ることで、大学選びの視野が大きく広がります。ここでは、歴史の古い順に5つのグループに分けて、その特徴と西日本に属する大学を見ていきましょう。
旧帝大グループ
旧帝大(旧帝国大学)は、1886年に公布された帝国大学令によって設立された大学を前身とする、日本で長い歴史と高い権威を持つ大学グループです。日本の医学研究と教育を牽引してきた大学群であり、現在もその影響力は大きいです。
西日本では、京都大学、大阪大学、九州大学の3校がこのグループに属します。京都大学は自由な学風の下、基礎研究で世界をリードする多くのノーベル賞受賞者を輩出。大阪大学は臨床研究に強みを持ち、その附属病院は国内最大級の病床数を誇ります。九州大学ではアジアの玄関口という立地を生かし、国際的な医療交流も盛んに行われています。
旧制医科大グループ
旧帝大に次ぐ歴史と格式を持つのが、旧制医科大学を前身とする大学グループです。これらは戦前に医学専門学校から大学へと昇格した大学群で、特に「旧六(きゅうろく)」と呼ばれる6つの医科大学(千葉、新潟、金沢、岡山、長崎、熊本)は、旧帝大に次ぐ格付けとされ、各地方における医療の頂点に君臨してきました。
各地域で長く中核的な医療を担ってきた歴史があり、卒業生のネットワークも強固です。西日本では、旧六である岡山大学、長崎大学、熊本大学の他、京都府立医科大学がこのグループに含まれます。例えば、岡山大学は中四国エリア、熊本大学は南九州エリアにおける医療の中枢を担っており、その地域での影響力は大きなものがあります。
旧設公立医大グループ
旧制医科大学とほぼ同じ時期に、都道府県や市によって公立の医科大学として設立されたのがこのグループです。戦後、その多くが国に移管されて国立大学となりましたが、設立母体が自治体であったことから、設立当初から地域住民の健康を守るという強い使命感を帯びています。
現在もその精神は受け継がれ、地域に密着したきめ細やかな医療人の育成に定評があります。西日本で旧設公立医大グループに属するのは、神戸大学、横浜市立大学、名古屋市立大学、大阪公立大学などです。例えば、名古屋市立大学は、旧帝大である名古屋大学とともに、中部地方の中核都市である名古屋の高度医療を支える重要な役割を担っており、地域住民から厚い信頼を寄せられています。
旧医専グループ
戦時中の医師不足を背景に、医学専門学校(医専)として設立され、戦後に大学へと昇格したのが旧医専グループです。日本の国公立大学医学部の過半数がこのグループに属しており、まさに戦後日本の医療インフラを全国津々浦々にまで広げた立役者といえます。
歴史の長さでは上位のグループに及びませんが、各県における医療の中心的・指導的な立場を担っている大学がほとんどであり、その地域での影響力は大きいです。西日本では、三重大学、鳥取大学、徳島大学、山口大学、徳島大学、鹿児島大学などがこのグループに含まれます。
新設医大グループ
1970年代、高度経済成長期を経て国民皆保険制度が定着する中で、全国どこでも質の高い医療を受けられる体制を整えるという国家的な要請から誕生したのが、この新設医大グループです。「一県一医大」構想に基づき、それまで医学部のなかった県に新設されました。
国公立大学医学部の中では歴史が浅いため、序列では下位に位置づけられることが多くなりますが、歴史が浅い分、伝統に縛られない柔軟な発想で、問題解決型学習(PBL)やシミュレーション教育といった先進的なカリキュラムをいち早く導入した大学も少なくありません。地域医療の現場を早期から体験できるプログラムを重視しているのも、このグループの大きな特徴です。
西日本では、滋賀医科大学、浜松医科大学、島根大学、大分大学、琉球大学などが該当します。
【私立編】西日本の医学部における序列
国公立大学と同様に、私立大学の医学部にも設立の経緯などに基づいた序列が存在するといわれています。私立大学は大学ごとの特色がより強く、歴史や成り立ちによって大きく3つのグループに分類できます。それぞれのグループの特徴を理解し、自分の目指す医師像と照らし合わせてみましょう。
私立旧設グループ
戦前から続く長い歴史と伝統を誇るのが、私立旧設グループです。関東の「私立医大御三家(慶應義塾大学、東京慈恵会医科大学、日本医科大学)」がこのグループの筆頭として全国的に有名ですが、西日本にも地域医療を長年支えてきた伝統校が存在します。
長い歴史の中で数多くの優れた臨床医や研究者を輩出し、独自の強固なネットワークを築いているのが強みです。西日本では、大阪医科薬科大学や関西医科大学がこのグループを代表する大学として挙げられます。これらの大学は、関西の医療界において重鎮としての地位を確立しており、そのブランド力は今なお健在です。
総合大学グループ
医学部だけではなく、文系・理工系・薬学部など多くの学部を持つ、大規模な総合大学に設置されている医学部がこのグループです。大学全体の規模が大きく、一般の知名度も高い大学が多いのが特徴です。
総合大学ならではの魅力として、多様なバックグラウンドを持つ学生との交流機会が豊富である点が挙げられます。例えば、工学部と連携した医療機器開発の研究や、薬学部と合同で行うチーム医療教育など、医学以外の学問分野に触れる学際的な学びが可能です。幅広い視野と多角的な思考を養いたい学生にとっては、非常に刺激的な環境といえるでしょう。西日本では、近畿大学がこのグループに属します。
私立新設医科グループ
国公立の新設医大グループと同様に、1970年代の「一県一医大」構想を背景として、国内の医師不足解消を目的に設立されたのが私立新設医科グループです。歴史は比較的浅いですが、その分、既存の枠にとらわれない先進的な取り組みが魅力です。
地域医療への貢献を使命に掲げ、最新鋭のシミュレーションセンターを完備していたり、早期から地域に根差した医療を体験できる臨床実習を多く取り入れたりと、ユニークなカリキュラムを導入している大学が多く見られます。西日本では、愛知医科大学、藤田医科大学、兵庫医科大学、川崎医科大学、福岡大学などがこのグループの代表格です。
西日本の医学部における偏差値ランキング
ここまで歴史的背景に基づく「序列」を解説してきましたが、現在の入試難易度を示す客観的な指標として「偏差値」も重要です。
ただし、繰り返しになりますが、序列と偏差値は必ずしも一致しません。また偏差値は予備校や模試によって変動するため、あくまで一つの目安として冷静に捉えることが大切です。
国公立のランキング
西日本の国公立大学医学部における偏差値ランキング(上位10校)は以下の通りです。このランキングからは、歴史的序列と現在の入試難易度の関係性が見て取れます。
| 順位 | 大学名 | 偏差値目安 |
|---|---|---|
| 1 | 京都大学 | 76.2 |
| 2 | 大阪大学 | 73.7 |
| 3 | 九州大学 | 70.2 |
| 4 | 名古屋大学 | 69.5 |
| 4 | 神戸大学 | 69.55 |
| 6 | 大阪公立大学 | 69.2 |
| 7 | 岡山大学 | 68.5 |
| 7 | 京都府立医科大学 | 68.5 |
| 9 | 奈良県立医科大学 | 68.2 |
| 10 | 広島大学 | 68.0 |
※2025年6月時点の情報を基にした目安
旧帝大である京都大学、大阪大学が上位に君臨し、それに旧制医科大や旧設公立医大が続く形となっています。京都府立医科大学や奈良県立医科大学といった旧設公立医大が、旧帝大に迫る偏差値となっているのは、それぞれの地域における高い評価と揺るぎない伝統が、受験生からの変わらぬ人気と高い難易度につながっていることを示しています。
私立のランキング
| 順位 | 大学名 | 偏差値目安 |
|---|---|---|
| 1 | 関西医科大学 | 68.3 |
| 2 | 大阪医科薬科大学 | 67.8 |
| 3 | 産業医科大学 | 65.8 |
| 4 | 近畿大学 | 65.0 |
| 5 | 藤田医科大学 | 64.7 |
| 6 | 愛知医科大学 | 64.2 |
| 7 | 久留米大学 | 63.3 |
| 8 | 兵庫医科大学 | 63.2 |
| 9 | 福岡大学 | 62.5 |
| 10 | 川崎医科大学 | 60.0 |
※2025年6月時点の情報を基にした目安
私立大学では、旧設グループである大阪医科薬科大学がトップ2に立っています。一方で、総合大学グループの近畿大学や、新設医科グループの藤田医科大学、兵庫医科大学なども上位にランクインしており、伝統的な序列とは別に、独自の教育改革や研究成果、立地の良さなどが受験生から高く支持されていることが分かります。
医学部の序列が生徒の将来に及ぼす影響
では、こうした序列は卒業後のキャリアに具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。「序列が高い大学に入れば将来は安泰」と単純に考えず、その影響の実態を冷静に見極めることが大切です。
関連病院への就職のしやすさ
歴史の長い大学ほど、大学の附属病院以外にも、多くの「関連病院」を全国に持っています。こうした大学の出身者は、関連病院への就職において有利に働くことがあるのは事実です。例えば、A大学出身の医師が多いB病院では、出身大学の先輩後輩というつながりから、研修医が指導を受けやすかったり、キャリアの相談がしやすかったりするケースがあるかもしれません。
ただし、出身大学名だけで就職先が全て決まるわけではありません。在学中の成績やCBT(共用試験)のスコア、病院見学での態度や熱意など、個人の努力や資質が大きく影響します。また病院ではなく製薬会社などへ就職する場合も、知名度の高い大学の出身であれば、学歴を理由に不利になることは少ないと考えられます。
医療関係者や患者さんからの信頼度
医師としての実力と出身大学が必ずしも一致しないことは、言うまでもありません。しかし、序列上位の大学は世間的な知名度も高いため、「〇〇大学病院の先生なら安心だ」というように、初対面の患者さんから信頼を得やすい側面は考えられます。キャリアの初期段階でチャンスを得やすくなる可能性はあるでしょう。
とはいえ、それはあくまでキャリアの入口での話です。最終的に一人の医師として信頼されるかどうかは、その人の知識や技術、そして何より患者一人ひとりに真摯に寄り添う姿勢にかかっています。
業界内でのネットワーク
いわゆる「学閥」と呼ばれる、卒業生同士の強固なネットワークも、序列の高い歴史ある大学の強みとされてきました。学会での発表や、研究会、医師会の役員など、重要な場面で同じ大学出身者が集まる機会は少なくありません。こうした交流が、新しい研究のきっかけになったり、困難な症例について相談しやすかったりするメリットにつながることもあります。
ただし近年は、医師の働き方が多様化し、医局に属さない医師も増えたことで、学閥の影響力は以前よりも薄れているといわれます。また私立の新設大学が独自のネットワークを強化するなど、業界の構図も変化しつつあるのが現状です。序列や学閥は、もはや絶対的なものではなくなってきています。
まとめ
医学界には伝統的に序列という概念が存在しますが、その影響力も時代とともに変化しています。偏差値もあくまで一つの目安であり、大学の教育内容や研究レベルの全てを示すものではありません。
大切なのは、序列や偏差値といった情報に振り回されず、自分がどのような医師になりたいのか、どのような環境で6年間を過ごしたいのかを深く考え、自分自身の価値観で志望校を選ぶことです。オープンキャンパスに参加したり、在学生の話を聞いたりして、数字だけではわからない大学の「空気」を感じることが、後悔のない大学選びにつながります。
医学部選びは、偏差値や序列といった情報に惑わされず、自分自身の目標と向き合うことが大切です。医学部進学予備校メビオでは、各大学の特色や入試傾向を熟知したプロ講師が、一人ひとりの志望校選びから合格までを徹底的にサポートします。関西の医学部に強いメビオで、あなたに適した志望校を見つけ、合格を掴み取りませんか。


