大阪医科大学の傾向分析2020
2020年度一般入試問題分析
英語
試験時間80分。大問1は英文和訳3問と50字説明問題、大問2は英文和訳3問、大問3は和文英訳3問という前年度前期と同様の形式。昨今の私立医学部では珍しい記述のみの問題構成であり、国公立志望者にとって特別な試験対策があまり必要ではない。実際に国公立医学部受験者が滑り止めとして受験する傾向にあるため、答案に求められる完成度は非常に高いと予想される。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【長文総合】和訳、要旨・要約 |
正しい数字の評価に基づく医療資源の適正配分に関する英文。下線部和訳が3問。その他1問が50字の説明問題。内容として抽象性が高いわけではなく、大阪医科大学で問われることの多い論点が多く含まれた標準的問題といえる。 |
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2 | 記述 | ★★★☆ |
【長文総合】和訳 |
使用言語によるネット上での情報格差に関する英文。下線部和訳が3問。比較の正しい理解を問う問題が含まれる。語彙についても文脈を踏まえた解釈が求められる。 |
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3 | 記述 | ★★★☆ |
【英訳】下線部英訳 |
脳科学によって明らかになった、脳の性差に関する偏見の間違いがテーマ。例年より全体の記述量は増加した。文内容を正確に読みとることができれば、英文そのものは比較的容易に構成できるが、幅広く標準的な表現、語彙が求められ、日頃の学習の蓄積で大きな差が出る良問。 |
数学
試験時間100分。2019年度前期と比較すると、難易度は下がり分量も減って解きやすいセットとなっている。[1]〜[3]は完答し、[5]は(2)までを仕上げたい。数学Ⅲの微積分、確率は必ず出題される。空間図形の出題率も高い。ここ数年は整数問題からの出題が目立つ。複素数も要注意である。他大学に比べて本格的な証明問題が多い。小問集合や、答えだけの穴埋め問題はない。難易度も標準〜やや難の問題が並び、基本問題もテクニックだけではなく本質的な理解を要求されている本格的なものである。大いに点差がつくであろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 答のみ | ★☆☆☆ |
【数列】2項間の漸化式、数列の極限 |
(1)は一見すると問題の設定がやや難解だが、どのような図になるかさえ掴めれば容易に解くことができる。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【三角関数】三角関数の応用 |
(1)は辺長などを三角関数で表していけばよい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【確率】排反事象・余事象の確率 |
(1)(2)は事象をうまく言い換えて考えれば難しくはないが、言い換えられなかった場合、やや煩雑な処理になったかもしれない。 |
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4 | 記述 | ★★★☆ |
【数と式】命題の真偽と証明 |
この種の証明に慣れていないと難しい。2006年の和歌山県立医科大の入試問題と全く同じである。 |
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5 | 記述 | ★★★☆ |
【積分法】漸化式を用いる積分、積分方程式・積分関数 |
(1)(2)は部分積分を行うことにより漸化式を作ることができる。ここは是非取りたい。 (3)は与えられた式を見て(2)で得られた式を利用することに気づくかがポイントになるが、気づきにくいかもしれない。 |
化学
理科2科目で120分。大問1は熱化学方程式からの出題で、やや計算の分量が多かったことを除けば難易度は標準。大問2は電気化学からの出題でどの問題集でも取り上げられているような平易な内容だった。大問3はイオン交換樹脂の計算方法、アミノ酸の pH によるイオン化の違いなどの問題で難易度は標準。大問4は糖類からの出題で二糖類の構造(トレハロース、ラクトース含む)などで難易度は標準。全体的に見ても問題量も適度であり解きやすい問題が多かった。標準的な問題集をやりこんでいる受験生ならば十分に得点できる内容だった。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱化学方程式】 |
熱化学の問題だが、状態に注意して計算していけば特に問題となるところはない。問 2 の「切れた結合」が二重結合全体を指すのか、 π 結合だけを指すのかが少し迷うところである。論述あり。 |
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2 | 記述 | ★☆☆☆ |
【電気分解】 |
硫酸銅(Ⅱ)水溶液の電気分解の問題で平易。数値も綺麗で完璧に答える必要があるだろう。 |
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3 | 記述 | ★☆☆☆ |
【イオン交換樹脂】 |
イオン交換樹脂に関する出題。実験 2 のアミノ酸の問題が正しく考えられたかが勝負の分かれ目だろう。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【糖類】 |
糖類に関する出題。少々答えに戸惑う穴埋めがあったものの、問われていることは標準レベルの知識・計算だった。二糖の構造式を見分けられるかどうかは練習量の差が出ただろう。 |
生物
理科2科目で120分。構成は例年通り。Ⅰは内容的には難しくはないものの論述をまとめるには手際の良さが求められるので、作戦としてはⅡ〜Ⅳを手早く片付けて、残りの時間で落ち着いてⅠの論述に取り組めば得点しやすかっただろう。論述問題は解答欄が1行〜2行程度とあまり大きくない場合が多いため、論点をコンパクトにまとめる練習をしておく必要がある。また、問題文から読解できることやグラフから読み取れることに対して一切ひねりを加えずに、そのまま論述させるという設問も多い。過去問でそういった設問を経験しておこう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★☆☆☆ |
【生命現象と物質】 |
「光合成」は問われている内容はオーソドックスだが、論述がややまとめにくかっただろう。論述あり。描図あり。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の多様性と生態系】 |
「生態系」では、エネルギー効率の計算の類題を解いた経験があるかどうかで差がついたと思われる。論述あり。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【生殖と発生】 |
「アルコールの分解」もコドンを読み推定する作業をはじめ、正確で迅速な処理力と設問の意図を汲み取る力が必要であり、全体として制限時間の中で解答しきることはかなり難しい。ただ、計算問題はその中ではまだ取り組みやすい方なので、できるだけ得点に結びつけたい。計算あり。描図あり。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【生物の環境応答】 |
「味覚・嗅覚」では問題文やグラフを丁寧に解釈できれば、高得点を狙えただろう。論述・描画あり。 |
物理
理科2科目で120分。昨年度よりやや易化。計算量は多く、工夫しないと繁雑になりやすい。形式や難易度は大きくかわらず、標準からやや難レベルの問題が並んでいる。制限時間内に解くにはかなりのスピードが必要で8割を超える点数を取るにはかなり要領よく立ち回れるだけの実力が必要。問題の量が多いのでスピードが大切である。小問は易しい。しかも同じ問題が繰り返して出されることがある(電力輸送、水圧、剛体等)。大量の演習をこなし、実力の底上げを地道にしていくしかないだろう。
大問 | 形式 | 難易度 | 内容 |
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1 | 記述 | ★★★☆ |
【力学】単振動、振り子 |
ばね振り子と単振り子の基本的な性質を問う問題。ばね振り子・単振り子の知識を上手く使って計算を省略したい。⑬は計算が煩雑になりやすいが、落ち着いて正答してほしい。 |
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2 | 記述 | ★★☆☆ |
【熱】気体の状態変化、気体の内部エネルギー |
断熱過程を含む熱サイクルの問題。(9) の計算でやや詰まった受験者も多いと思われるが、できれば完答して欲しい。 |
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3 | 記述 | ★★☆☆ |
【電磁気】電磁誘導と誘導起電力、電流が磁界から受ける力 |
問われている個々の知識は基本的であるが、設定が段階的に変化してゆくので、その変化ごとに図を新しくしてゆくなどして混乱しないように作業をしたい。完答したいが、注意深さが求められる。 |
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4 | 記述 | ★★☆☆ |
【小問集合】交流・送電、熱と温度 |
例年通り電力輸送が出題された。しっかり対策をしておく必要がある。単純な熱量計算の問題。渦電流の原理がわかっていれば問題ない。 |
受験者数および合格者数推移
受験者数 | 一次合格者数 | 二次正規合格者数 | 合格最低得点/満点 | 得点率 | |
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2020年度 | 1,663名 | 204名 | 164名 | 249/400 | 62.2% |
2019年度 | 1,656名 | 207名 | 167名 | 270/400 | 67.5% |
2018年度 | 1,483名 | 205名 | 172名 | 268/400 | 67.0% |
医師国家試験合格率推移
全体 | 新卒 | |
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2020年度 | 100.0% | 100.0% |
2019年度 | 91.5% | 93.7% |
2018年度 | 93.3% | 99.1% |
2017年度 | 89.0% | 91.2% |